
VOICE 185
Arzeena Hamir and Neil Turner,
Owners of Amara Farm
Photography - HIRO Interview - MINA

「アマラ・ファームが大切にしているのは、さまざまな形でのコミュニティです。植物同士のつながりもあれば、人と人とのつながり、そして私たちを支えてくれる人やお客さんとのつながりもあります。根底にあるのは、コミュニティを育てること。そして、暮らしの中にある大切なことを、もう一度見つめ直すことです。農業から学べることは本当にたくさんあります。実際に触れて、香りを感じて、肌で感じることが大切なんです」
アーゼーナ・ハミルさんは、いつも忙しい女性です。有機認証を受けたアマラ・ファームを夫のニールさんと営みながら、地域の活動にも積極的に関わっています。2018年から2022年まで地域区Bの理事を務め、今年10月の地方選挙で、再びその役職に選ばれました。
農場の仕事に地域活動、政治への取り組みと、これだけ多くのことをこなしていると、いったいどうやって時間をやりくりしているのだろうと思うほどです。けれど、アーゼーナさんはいつも、誰かを手伝ったり、ちょっとした頼み事に応えたり、VOICEの取材に応じてくれたりと、人のための時間を惜しみなくつくってくれる方です。
そんな彼女の、農家や地域のリーダーという肩書きの向こう側には、どんな人柄があるのでしょう。
アーゼーナさんは、農家の家庭で育ったわけではありません。リッチモンドの郊外で育ち、高校時代に植物への興味を深める一方、いつか海外で地域開発に携わりたいと考えていました。生物の先生の勧めでゲルフ大学の農学部に進み、作物学を専攻し、熱帯農業も学びました。
大学時代、ジャマイカへの研修旅行で出会ったのが、後に夫となるニールさん。海外で働きたいという共通の思いから、二人はタイへ渡りました。そこで、化学資材に頼る農業に苦しむサトウキビ農家の現実を目の当たりにしたことが、有機農業への関心につながりました。その後、アーゼーナさんはイギリスで持続可能な農業について学び、修士号を取得します。
カナダに戻った二人にとって、大きな転機となったのは2008年の金融危機でした。食料品を買いだめする人々や、商品がなくなったスーパーの棚を目にし、食べ物がいつでも手に入るのは当たり前ではないのかもしれないと気づいたのです。食料の供給が不安定になったとき、自分たちで食べ物を育てることが、その解決の一つになるのではないか。二人はそう考えるようになりました。
農業を学んできたとはいえ、実際に農場を営むことはまったく別の経験でした。最初は人の家の庭を借りて野菜を育てるところから始まり、少しずつ規模を広げていきました。そして2012年、家族でコモックス・バレーに移り住み、農家として新たな一歩を踏み出しました。
今もアーゼーナさんの暮らしの中心にあるのは、何かを育てること。ただし、それは植物だけではありません。人と人、農家同士、そして地域とのつながりも、彼女が大切に育てているものです。
話を聞いていると、彼女にとって農業は、ただ畑で作物を育てることではないのだと感じます。土地とどう向き合い、どう暮らし、人とどう支え合っていくのか。アーゼーナさんの農業には、そんな日々の暮らしや、人とのつながりを大切にする思いが根づいています。
VOICE(V):コモックス・バレーを選んだのはなぜですか?
アーゼーナ(A): 最初は、以前住んでいたリッチモンドに近い場所で農地を探していたんです。でも、18歳のときにコモックスの農場で働いたことがあって、この地域にはずっと愛着がありました。実際に農地を購入してみたら、なんと当時働いていた農場が、道路を挟んですぐ向かいにあったんですよ!
地域に惹かれた理由は、ほかにもありました。初めて農場を探しに来たとき、スターバックスが見つからなかったんです(笑)。その代わり、コートニーのダウンタウンには、オーガニックやフェアトレードのコーヒーを出すカフェが10軒ほどありました。ファーマーズマーケットも、この規模の地域としてはとても活気があって、80軒ほどの農家が参加していたんです。地元で採れたものを買いたい人が、それだけたくさんいるということですよね。
それから、社会活動や世界各地のコミュニティをテーマにしたドキュメンタリー映画祭「The World Community」もありました。そうしたものを通して、この地域の人たちや価値観に共感するようになったんです。
移住した当初は知り合いが誰もいませんでしたが、有機農家をはじめ、地域の農家の皆さんがすぐに温かく迎えてくれました。ファーマーズマーケットで少しずつ顔を覚えてもらい、私自身も地域のボランティア活動にたくさん参加しました。思っていた以上に、自然とコミュニティの一員になることができたんです。
V:農場はどのように始めたのですか?
A: 2010年に土地を購入し、最初は義理の両親が敷地内の古い家に住んでいました。ニールと私は娘たちを連れて、月に一度くらいここに来ていたんです。土地の手入れをして、ニンニクを植えて、それから家に帰る。そんな感じでした。当時はまだ、土地の購入費用を返済しているところでした。
ようやく家族で移住したときも、ニールは本土側で仕事を続けていたので、最初は娘たちと私だけで農場に暮らしていました。
以前の所有者は有機認証を取得していなかったため、有機農業への転換には4年かかりました。当時、畑は一面草に覆われていて、古い納屋がいくつかと、グリーンハウスが3棟あるだけでした。草地を農場に変えていくのは、時間のかかる作業でしたね。
まずはグリーンハウスを2棟使い、敷地の周りに鹿よけのフェンスを設置しました。そこから少しずつ、農場を広げていったんです。
最初に育てた作物はニンニクでした。すべてはそこから始まりました。
V:農業をするうえで、大切にしている考え方はありますか?
A: 私たちが目指していた農業のあり方に、有機認証が合っていたんです。それに、認証を取得したことで地域とのつながりも生まれました。移住したばかりの頃は知り合いも少なかったのですが、ほかの有機農家との関係を築くきっかけにもなりました。
私たちがずっと大切にしてきたのは、地域の人たちのために食べ物を育てることです。バンクーバーなど、遠くの市場に出荷するために作物を育てたいとは思っていませんでした。
それから、多様性も大切にしています。一つの作物に絞るのではなく、できるだけいろいろな作物を育てる。そうすれば、ある年に一つの作物がうまく育たなくても、ほかの作物で補うことができます。
もう一つ、私たちは農薬などを散布することが好きではありません。有機農業で認められている資材であっても、基本的に使わないようにしています。
周囲には美しい森があり、受粉を助けてくれる昆虫や、害虫を抑えてくれる益虫もたくさんいます。生き物の多様性を大切にしているおかげで、深刻な害虫被害はほとんどありません。
V:アマラ・ファームならではの特徴は何だと思いますか?
A: 自分たちの価値観や、有機農業に対する姿勢を大切にしてきたことが、今の信頼につながっているのだと思います。
ほかの地元農家を積極的に応援していることも、私たちの特徴ですね。できる限り協力し合いながら仕事をしています。地域の食の仕組みをしっかり支えていくには、農家同士が助け合うことが欠かせないと思うんです。
政治や地域活動についても、自分たちなりの考えを大切にしています。何を信じ、何を大切にしているのかを隠さずに伝えているので、私たちから商品を買うことは、単に農場を応援するだけでなく、私たちが地域で大切にしている価値観を応援することでもあると、理解してもらえているのだと思います。
アマラ・ファームの代表的な作物はニンニクやブルーベリーですが、いろいろな作物を育てていることも喜んでもらえています。
V:コモックス・バレーは、どんなコミュニティだと感じますか?
A: この地域には、コミュニティを大切にして、何か自分にできることをしたいと思っている人が集まっている気がします。ボランティア活動がとても盛んですし、地域には200を超える非営利団体があります。興味のあることが何であれ、きっと同じ思いを持つ人たちのグループが見つかると思います。私も移住したばかりの頃は、6つもの団体の理事を務めていたんですよ!
それぞれの地域に個性があるのも面白いところです。カンバーランドはアートや文化、音楽が盛んですし、コートニーにはナイトライフが楽しめる場所。コモックスには、おいしいフィッシュ・アンド・チップスのお店もありますよね。
そして、何といっても自然の美しさ。この地域では、車で15分も走れば、どこか美しい自然の中に行けるんです。
でも、私たちが特に心を動かされたのは、人々の親切心でした。移住したばかりの頃、道路の向かいに住む隣人が何度も様子を見に来て、手伝ってくれたり、いろいろなものを作ってくれたりしました。ほかの農家の皆さんも、さまざまな形で力を貸してくれたんです。農場を始めたばかりの私たちにとって、そうした助け合いの精神は本当に大きな支えでした。
V:農家をしていて、最もうれしいことと、大変なことは何ですか?
A: 自分たちが育てたものを食べた人から、「おいしかったよ」と言ってもらえるのは、本当にうれしいですね。
食べ物を育てることには大きな責任を感じていますが、食べ物を通して、作る人と食べる人がつながることにも魅力を感じています。
一方で、大変なのは、農場の仕事には終わりがないこと。小さな赤ちゃんを育てているようなものなんです。時間もエネルギーもたくさん必要で、ときには手に負えないと感じることもあります。
だからこそ、自分の限界を知り、仕事とそれ以外の時間にきちんと線を引くことが大切だと思います。農業を長く続けていくためには、体だけでなく、メンタルヘルスも守らなければいけません。私が目指したいのは、持続可能な農場だけでなく、農家自身も無理なく、長く続けられる暮らしを築くことなんです。
V:環境や社会の変化は、今の農業にどのような影響を与えていると思いますか?
A: 大規模な工業型農業が環境に与える影響や、人々の健康への影響、そして農業従事者に十分な賃金が支払われていないことなど、これまでの仕組みの問題点が、ますます見過ごせなくなっていると思います。ただ、そうした仕組みに代わる農業を担う人は、まだ十分にいません。
アマラ・ファームでは、環境を大切にしながら地域に有機農産物を届け、働く人たちにも十分な賃金を払える農業ができることを示したいと思っています。簡単ではありませんが、実現できると信じています。
また、気候変動や世界情勢によって、工業型の食料供給システムがいかに影響を受けやすいかも見えてきました。私たちはこれまで、アメリカから安価な食料が入ってくることに大きく頼ってきましたが、これからは「安い食料」が当たり前ではなくなるのかもしれません。では、その先にどんな仕組みをつくっていけばいいのでしょうか。
私は、環境に配慮して育てられた地元の食べ物を、もっと手に入れやすくなってほしいと思っています。
興味深いことに、地元で育てられた農産物の価格も、スーパーの商品と以前より差がなくなってきています。例えば、私たちが販売しているセロリルートは5ドルですが、スーパーでは9.50ドルで売られていることもあります。
地域で食べ物を生産することは、これからの物価上昇や供給の混乱に地域が対応していくうえでも、大きな力になると思います。小規模農家が、これから地域が直面するさまざまな課題を乗り越えるための、大切な役割を担えることを願っています。
V:政治に関わるようになったきっかけは何だったのでしょう?
A: 政治に関わり始めたのは2018年です。きっかけは、農業に関する問題でした。当時、ファーマーズマーケットの会場にもなっていた展示場に、コンベンションセンターを建設する案が検討されていたんです。その土地は農業用地として確保されていたので、建物を建てるのではなく、食べ物を育てるために使うべきだと強く感じました。
最初は、その計画への憤りが原動力でした。でも、それと同時に、食料の安定供給や環境保護といった問題を、政治の場でもっと取り上げてほしいと思ったんです。
2018年から2022年まで地域区Bの理事を務めた期間には、いろいろなことを実現できました。2018年にはフードポリシー・カウンシル(食料政策協議会)を設立しましたし、コートニーや地域区内の人たちが、自宅の driveway(車道スペース)で農産物を育てて販売できる機会づくりにも取り組みました。
ここ数年、自宅の前で野菜や果物を販売している人をたくさん見かけるようになりました。とてもいいことだと思います。近所の人同士がつながるきっかけになりますし、地域の食料供給を支えることにもつながりますから。
私は、地域の行政が自分の大切にしている価値観を反映するものであってほしいと思っています。そして、この地域には同じ思いを持つ人がたくさんいると感じています。
今回、再び立候補したのは、地域にとって重要な問題が、まだ解決していないからです。特に、農家が必要とする水の確保、気候変動、そして食料の安定供給は大きな課題です。こうした問題がやってくることはわかっています。危機になってから対応するのではなく、その前に備えておく必要があるんです。
それから、もっと多くの農家に政治に参加してほしいとも思っています。自分たちの暮らしや農業の未来に関わる決定に、農家自身の声がきちんと反映されるべきですから。
V:あなたにとって、食とは何ですか?
A: 食は、私の体をつくる一つひとつの細胞になっていきます。体を養うものですが、それだけではありません。食べる喜びもあります。私は食べ物の味わいが大好きですし、料理をするのも好きなんです。
でも、何より大切に感じているのは、食べ物と、それが育った土地とのつながりです。植物は土から栄養を吸収し、私たちがそれを食べることで、その栄養が今度は私たちの体を育ててくれます。そのつながりを、とても親密で意味のあるものだと感じています。だからこそ、土地を守ることが大切なんです。土地から生まれたものが、最終的には私たち自身の一部になるのですから。
私にとって食は、身体的なものでもあり、精神的なものでもあり、生態系とのつながりでもあります。誰もが、食べることを通して、そうしたつながりを感じられたらいいなと思います。
それから、私たちは「自分たちの土地」と呼ぶ場所で農業をしていますが、そこが先住民から奪われた土地であるという事実にも、目を向ける必要があります。その事実から目をそらすことはできません。
和解に向けて何をすべきなのか、私自身、すべての答えを持っているわけではありません。ただ、先住民の人々が大切にしてきた土地との向き合い方から学び、豊かさを取り戻すことや、多様性を尊重することなど、その考え方を農業にも取り入れていけたらと思っています。
ニール(N): 先住民の人々は、食は薬でもあるということを、ずっと昔から理解してきました。一方、現代の西洋社会では、食と薬はまったく別のものとして考えられがちです。私たちは、食に対する考え方を変える必要があると思います。食は生きていくために必要なもので、健康や幸福の土台です。
農業をビジネスとして捉える傾向が強くなっていますが、食べ物は生きるために欠かせないものです。食べ物を届けるということは、利益を上げること以上の意味がある。そのことを、もっと認識する必要があると思います。
V:アマラ・ファームという名前には、どんな意味があるのですか?
A: 二人の娘、アミーナとイナラの名前からつけました。私の家族の言語では「アマラ」は「私たちのもの」という意味で、アラビア語では「贈り物」という意味があります。私たちにとって、とても個人的で特別な意味を持つ名前なんです。
V:アマラ・ファームのこれからについて、どんなことを考えていますか?
A: 私がとてもうれしく感じることの一つは、土地を利用できる人が増えていくことです。もっと多くの若い人たちに、野菜づくりに挑戦してほしいと思っています。ここにはまだ十分なスペースがありますし、もっと多くの人に農場に来てもらえたらうれしいですね。
それから、農場を継続していくことに苦労しているほかの農家にとっても、アマラ・ファームが一つの参考例になれたらと思っています。土地や資源をシェアすることで、もっと多くの人が食べ物を育てられるようになる。私たちがそれを実践することで、ほかの人たちにも同じような取り組みが広がっていったらいいなと思います。
N: 付加価値のある加工品も、もっと増やしていきたいですね。最近、新しい食品乾燥機を導入したので、ハーブティーやフルーツティーを作れたらと思っています。
インターンの一人であるナターシャは、先住民の人々が伝統的に利用してきた植物を育てています。こうした取り組みを通して、つながりを深め、和解を後押しし、先住民の知識や知恵への理解を広げていけたらと考えています。
将来的には、農場を訪れて農業や食について体験してもらうアグリツーリズムにも取り組んでみたいですね。
V:これから農家になりたい若い人たちに、何かアドバイスはありますか?
A: ちょっと意外に聞こえるかもしれませんが、まずは仕事を見つけることです。
農業を始めたばかりの頃から、農場だけで生活費のすべてを稼ごうとは思わないほうがいいと思います。ほかに仕事があることで、限られた農場での時間を、かえって有効に使えるようになるんです。時間が限られていれば、本当に大切なことに集中せざるを得ませんから。
農家の中には、農場にとってそれほど大きな価値を生まない細かな作業に、時間をかけすぎている人もいるように感じます。自分が今やっていることは、本当に農場の価値を高めているのだろうか。そう問いかけてみることも大切です。ほかに収入源があれば、農場が軌道に乗るまでの経済的な安心にもつながります。
二つ目のアドバイスは、小さく始めること。アマラ・ファームも、一晩で今の姿になったわけではありません。一つの畑から始めて、少しずつ隣の畑へと広げていきました。
お金の管理もしっかりする必要があります。どの作物が利益につながるのか、それぞれの作物にどれくらいの労力がかかるのか。自分が育てているものの経済性を理解することが大切です。
そして、周りの人たちとのつながりをつくること。農業は、一人ですべてを抱えてやる仕事ではないと思います。友人や家族と協力しながら取り組むほうが、ずっと楽しいですから。
N: 趣味を持つことですね。釣りでも、サッカーでも、自分が楽しめることなら何でもいいんです。農業にすべてを注ぎ込んで、それ以外に何もなくなってしまうと、燃え尽きてしまう危険があります。
それから、失敗することも覚悟しておく必要があります。農業は天候に大きく左右されるので、作物がうまく育たないこともあります。大切なのは、柔軟でいること。うまくいかないときには、やり方を変える準備をしておくことです。一つのことにすべてを賭けないことですね。
最後に、メンタルヘルスを大切にしてください。うまくいかないことがあっても、笑える余裕を持つこと。
農業は大変な仕事ですが、同時に、喜びを感じられるものであってほしいと思います。


Amara Farm
Arzeena and Neil started Amara Farm in 2012 with a dream of growing healthy food for their neighbours. It began with vegetables, and in 2014 an acre of blueberries joined in. The farm became certified organic in 2015, and has since won the Land of Plenty Award (2018) and the Comox Valley Record’s Best Market Vendor (2019). Now a new orchard of apples, pears, and hazelnuts is growing, and garlic remains a farm specialty.

































