
VOICE 178
Carol Perry, Owner of
Island Bliss Farm
Photography - HIRO Interview - MINA

「Island Blissは、日常から離れて心を解放したいときに訪れる場所。自分自身を取り戻し、ぐっすりと眠れる、そんな場所です」
Campbell Riverからフェリーでわずか10分。緑豊かなQuadra島に上陸して車を少し走らせると、Island Bliss Farmが静かに姿を現します。ここは、まるで島の魅力を丸ごと凝縮したような場所。色とりどりの花が咲く庭、自由に収穫できるベジタブルガーデン、そして森の中に佇む、可愛らしくどこかノスタルジックなコテージたち。山羊や鶏たちが芝生の上をのんびり歩く風景が、訪れる人の心をゆるやかに解きほぐしてくれます。
このファームを20年以上にわたり営んできたのは、Carolと夫のJamie。彼らの温かなもてなしは島の人々に愛され、夏には常連客やローカルの観光客が訪れます。近年では、ヨーロッパや上海など、海外からも長期滞在を求めて多くの人々が訪れるようになりました。
「人は休む場所を必要としているの。私たちはそれと、親切を提供したいの」と語るCarolは、ゲスト一人ひとりの心に寄り添いながら、時には一緒に散歩をし、時には畑で収穫をし、手作りの食事でもてなすこともあります。
この島を旅したことをきっかけに、「ここに住みたい」と願ったCarolとJamie。その想いは今もファームのすみずみに息づき、訪れる人々の心をも動かします。Island Bliss Farmでの滞在は、都会の喧騒から離れ、自分の内側にある大切なものを思い出させてくれたり、小さな発見をもたらしてくれる時間となるはずです。
可能であれば、数日から一週間の滞在を。島時間に身を委ねる体験は、あなたの旅の記憶を、一生の宝物に変えてくれるでしょう。
V:どうしてクアドラ島に住むことになったのですか?
Carol(C):何年も前に家族で初めてクアドラ島にバケーションで来たのがきっかけです。その後も何度も来るようになり、3回目のときに夫に「もう帰らない!」って言ったんです。Taku Resort and Marina によく滞在していて、そこで「あ、ここだ」と感じました。夏に木々が熱くなると、特別な香りが空気に広がって、それが子どもの頃に住んでいたサンシャインコーストを思い出させてくれたんです。すべてが懐かしく、島の静けさにも惹かれました。バンクーバーを離れるなんて…と友人たちには驚かれましたが、実は私、バンクーバーをちゃんと楽しんでいなかったんです。都会に住んでいたけど、本当の意味で「生活」している感じはなかったんですよね。
V:Island Bliss Farm はどうやって始まったのですか?
C:クアドラに引っ越してきたのは、2005年のことです。5エーカーの土地を購入して、本格的にここでの暮らしがスタートしました。実はずっと、いつか自宅で仕事をしながら、ファームステイをやってみたいと思っていたんです。当時、子どもたちもまだ小さくて、学校にも通っていたので、家で働ける環境にしたいなと。学生の頃には観光学を学んでいて、「Goat Mountain Lodge」っていう架空の宿のビジネスプランを書いたこともあるんですよ(笑)。場所はネルソンっていう設定でした。それから実際に、バンクーバーで観光業に10年ほど携わっていました。でも、実際にファームステイを運営するのも、農業も、島での暮らしも、すべてが初めてのことばかりで…。それでも今では、本当にかけがえのない経験になっています。世界中からさまざまな人たちが訪れてくれて、毎回新しい出会いがある。それが、私にとっては何よりの喜びなんです。
V:Island Bliss Farm の魅力はなんですか?
C:宿泊ゲストのために野菜ガーデンを育てていて、自由に収穫できるようにしています。夏は特にラズベリー摘みが人気ですね。なかにはもっと体験型を楽しむ方もいて、子どもたちはヤギと一緒に森を歩いたり、野菜を収穫したり、土からじゃがいもを掘ったりするのが大好きです。食べ物がどこから来るのかを知ってほしいし、そういう交流がとても好きなんです。5月、6月、9月にはヨーロッパからのツアーゲストも受け入れていて、希望があれば夕食も提供します。料理はすべて手作りです。
2023年には「バイオスフィア認証」を取得しました。環境への影響やゴミをできるだけ減らすのが目標です。宿泊中も、ゲストが自然にカーボンフットプリントを抑えられるような体験をデザインしています。
V:バイオスフィア認証についてもう少し詳しく教えてください。
C:この認証は、は国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の17項目に基づいたもので、私たちのサステイナブルな取り組みをきちんと証明する手段になっています。
この認証を得るためには、私たちがどのように環境に配慮したビジネスを行っているか、すべての取り組みをしっかりと記録・提出する必要があります。最近加わった取り組みとしては、電気自動車の充電ステーションの設置と、在来植物や花粉媒介者(ポリネーター)を育むガーデンの造成があります。こういった一歩一歩が、「より環境にやさしい旅」を実現していくための大切な取り組みだと思っています。
V:ゲストには、どんな滞在を体験してほしいですか?
C:やっぱり「静けさ」と「穏やかさ」、そして「心が落ち着く空間」ですね。
都市から来ると、ほんとうに“静か”な場所にいるだけで、それだけで幸せって感じることがあると思うんです。だからこそ、うちに滞在する方には、ぐっすり眠れて、心からリラックスできる夜を過ごしてほしいなと思っています。滞在の体験が、何か心に残るものになるように。できれば、その先の人生の小さなきっかけになるような、意味のある時間を届けたいんです。
それからもうひとつ、私がゲストに必ず見せているのが「ミミズコンポスト」!
みなさん意外とびっくりされるんですが(笑)、楽しんでもらえるんですよ。
「家でもやってみようかな」って言ってくださる方もいて、そんなふうにちょっとしたインスピレーションになれたら嬉しいですね。
クアドラ島で暮らす私たちにとって、自然は何より大切な存在です。だからこそ、ここを訪れる人たちにも、「この島をどれだけ大切に想っているか」「守り続けたいと思っているか」を、感じ取ってもらえたらいいなと思っています。
V:もしゲストがクアドラ島に1日しか滞在できないとしたら、どんなプランを提案しますか?
C:まず最初におすすめしたいのは「レベッカ・スピット」です。2025年夏号の British Columbia Magazine の表紙にもなっています。それから、港のそばにある「Coveside Seafood Eatery」のフィッシュ&チップスも私のお気に入りです。テイクアウトして、ビーチで景色を楽しみながら食べるのがおすすめです。
体力に自信がある方には、島をぐるっと自転車でまわるのもいいですよ。レベッカ・スピットからスタートして、サウスエンド・ワイナリーまでサイクリングできます。その途中で「James Pottery」に立ち寄るのもおすすめです。彼らは40年以上、この島で活動している陶芸家です。ぜひ、地元のアーティストのスタジオをひとつは訪れてほしいですね。この島のいちばんの魅力は、やっぱり“人”なんです。
V:オフシーズンはどのように過ごしていますか?
C:Island Blissでは通年で宿泊を提供していますが、「Little Bliss Barn」という多目的スペースを使って、季節ごとの少人数制ワークショップも開催しています。3月には、ポートムーディから、「フェアリーランドのメアリーさん」を招いて、フェアリーハウスを作るワークショップを行いました。とても楽しかったですよ!この秋は、羊毛を洗って、紡いで、織ってマットにするワークショップを予定しています。どのワークショップも、すべて手作業で行うのが特徴です。こういった集まりは、これまで出会ったことのない地元の人たちとつながる良い機会にもなりますし、参加者が自分の創造力を発揮できる場にもなっています。
V:島に何かひとつ変化を加えられるとしたら、どんなことをしたいですか?
C:まずはもっとビーチへの公共アクセスが増えるといいなと思っています。たとえば、誰でも安心して歩けるような整備された遊歩道や、わかりやすい案内サインを設置するとか。
できれば、島全体をぐるっとつなぐような、徒歩や自転車用のトレイルネットワークができたら最高ですよね。
あともう一つ夢があって…クアドラ島をぐるっと巡回する、無料の電気シャトルバスがあったらいいなと思っているんです。
それがあれば、日帰りで訪れる観光客も車をフェリーに乗せずに島に来られるし、移動手段がない地元の人たちも、もっと自由に動けるようになりますよね。特にお年寄りや若者にとっては、孤立を減らすきっかけにもなると思います。って、ひとつじゃなくて、願いごとがいっぱいになっちゃいましたね(笑)。
V:これからの島やビジネスの展望について教えてください。
C:実は今、島のコミュニティ全体で、商工会議所を通じて2026年に向けた「持続可能な観光プラン」の助成金申請に取り組んでいます。
というのも、今のクアドラ島はピークシーズンになると明らかにキャパオーバーなんです。このプランでは、「責任ある観光」ってそもそもどんな形なのかをみんなで考えていく予定です。観光が島に与えている本当の影響についても、もっと理解を深めていけたらと思っています。
たとえば、「これからどんなビジネスを誘致していくべきか?」とか「クアドラ島ってどんな島として発信していきたい?」といった問いを、今みんなで真剣に考えているところです。あと、「オーバーツーリズムをどうやって自分たちでコントロールできるか?」っていうのも大きなテーマですね。
正直なところ、夏の時期にこれ以上観光客を受け入れるのは難しいんです。でも逆に、秋や冬はまだ余裕があるので、そっちにうまく分散できたらいいなと思っています。
観光のバランスが整えば、年間を通じて仕事が生まれる可能性もありますよね。そうすれば、若い家族がここで暮らしやすくなって、コミュニティがもっと活気づいて、多様性も広がる。
今、私たちが取り組んでいるのは、そういった“これからの島のかたち”を探っていくことなんです。


Island Bliss Farm
Offering #countryaccommodation and #workshops year round on #quadraisland. Farming on an island off the #westcoast of British Columbia is bliss. 🐐 🐓

































