
VOICE 180
Akiko Gulkison, owner, and Ko Tanimizu, chef
of
COFU Chinatown
Photography - HIRO Interview - MINA

「次世代寿司の聖地を目指して、野菜寿司を文化遺産に登録したいです!」
「いらっしゃいませ!」
COFU Chinatownのドアを開けると、キレの良い挨拶が響き渡ります。「扉を開けた瞬間から違う国に来た」と感じてほしいと語るオーナーのAkikoさんは、2021年にビーガン寿司の先駆けとしてCOFU Andersonを創設したオーナー。今年7月、ChinatownのGoreとPenderの角に構えた二号店では、自らもカウンターに立ち、野菜寿司の「おまかせ」18コースを提供しています。寿司を握るのは、日本で16年の経験を持つベテランシェフのKOさん。軽やかな手捌きで、次々と野菜を魅力的な寿司へと仕立てていきます。
日本人でもあまり馴染みのない野菜寿司。寿司を食べ慣れている人なら、最初はどうしても一品一品を魚の寿司と比べてしまうでしょう。「これはネギトロに見立てたジャガイモですね?」とか、「昆布じめに見立てた白菜の昆布じめですね?」など。しかし食べ進めるうちに、これは野菜が主役の創作寿司なのだと確信していくはずです。普段から食べ慣れている野菜でも、珍しい野菜でも、それぞれの味を引き立て、見た目・香り・食感までもが新鮮な驚きをもたらします。想像力を掻き立てられ、五感で味わいつくすクリエイティブな品々。思わず「次はどんな野菜を握ってくれるだろう」と期待が膨らみます。
COFU Chinatownの真の魅力は、寿司だけではありません。美しい和食器に盛られた一品一品は、口に運ぶ前にしばらく眺めていたくなるほど。本格的な日本酒のペアリングも、ジェネラルマネージャーの丁寧な説明とともに堪能できます。おまかせの最後には、日本の甘味と、その場で点ててくれる宇治抹茶。カナダにいながら「ここは本当に日本?」と思うほど、きめ細やかなサービスとおもてなしが行き届いています。前菜のお吸い物を出されたとき、Akikoさんの「温度はよろしいですか?」という一言に、日本の気配りの精神が凝縮されているように感じました。ここは、日本の精神と美学を宿した場所なのです。
おまかせコース以外にも、COFU Chinatownにはたくさんの魅力があります。カジュアルダイニングスペースではアラカルトをはじめ、寿司やラーメン、お重のメニューも。朝9:30~14:30までは「HUSH Coffee」としてカフェ営業もしており、ビーガンの今川焼きとともにコーヒーや抹茶ドリンクを提供しています。ハッピーアワーには貴重な日本酒フライトも楽しめます。
とはいえ、日本の文化と寿司の真髄を体験したいなら、やはりおまかせが絶対的におすすめ。
8名限定・二部制で、開始時間は17:45、または20:00。個人的には第一部のスタートがおすすめです。夕暮れのChinatownの街並みとともに、店内が少しずつ薄暗くなり、ムードが高まっていく時間帯。まさに「空間を味わう」体験がそこにあります。
多くの名店がひしめくChinatownの中で、COFU Chinatownはさらに新しいハードルを打ち立てる存在になるのではないでしょうか。「バンクーバーで本物の日本食はどこで食べられる?」と聞かれたら、迷わず「COFU Chinatown!」と答えるでしょう。
VOICE (V): COFU Chinatownを出店したきっかけは何でしたか?
Akiko (A): バンクーバーでは、お寿司というとまだ魚のものが主流です。野菜の幅と美味しさをもっと広げたいとずっと思っていて、COFU一号店だけではplant-basedの箱としては小さいなと、まだ可能性を感じていました。二号店を出すなら、私にしかできないことをしようと考えた時に、寿司だけにとらわれない独創的なお店を作りたかったんです。コロナの大変な時期も落ち着き、対面式で握りの寿司を楽しんでほしいという思いもありました。日本人のおもてなしのサービスは世界で通用しますから、そこを武器にしたいと考えました。「今日フレンチ行こう」みたいな感覚で、「ビーガン寿司に行こう」って言ってもらえるジャンルになってほしいです。ビーガンとそうでない人の垣根を崩していきたいんです。
V: 新店舗の一番のこだわりポイントは?
A: 空間ですね。カウンター席で、店内の雰囲気を楽しみつつ、対面式でシェフの握る寿司を味わい、お酒のペアリングと共に楽しんでもらうこと。日中はカフェや軽食で、夜はおまかせコースで、時間帯によって店内もガラリと雰囲気が変わります。食材は、日本のオーガニック野菜を栽培しているローカルの農家さんからメインに仕入れて、日本の品種だけどローカルで育ったものを心がけています。ミョウガ、しそ、シシトウなど意外といろいろ手に入るんです。せっかくChinatownにいるので、今後は乾物とかも取り入れてみたいと思いますね。また、盆栽を飾ったり、食器もほぼ日本のものを取り揃えていて、食材だけでなく真の日本を味わってもらうことも大切にしています。
シェフKO (K): 前回カジュアルダイニングで来店されて、次は誕生日祝いを兼ねておまかせカウンターを予約する、といった、いろいろな用途に合わせてダイニングエクスペリエンスができるのも魅力だと思います。
V: シェフKOさんは、なぜ寿司のシェフになったのか教えてください。
K: 家族で回転寿司に行った時に、カウンター越しで握っている寿司職人の姿がかっこよく見えたのと、お米とわさびと醤油という極めてシンプルな材料で、これだけ美味しい食に変えてしまう寿司の魅力にも惹かれていきました。握り方の手の工程だったりで、十人十色の寿司があるという神秘さも魅力の一つです。さらに奥深いのは、見習い中、一年に一回しかネタの練習ができないんですよ。例えば、穴子だったら夏の時期だけで、シーズンが終わったらまた来年の夏まで待たないと練習ができません。一つのネタを学ぶのに何年もかかるんです。自分は今、寿司シェフ歴16年目ですが、常にアップデートしないといけなくて、終わりなき旅路だと思っています。
V: カナダで寿司を握るにあたり、チャレンジに感じていることはありますか?
K: 料理の見た目でしょうか。日本だと、見た目はシンプルでも味で勝負、という価値観が強いんですけど、カナダだと見た目にキャッチーで華やかさを求められることが多い。そこを意識しながら、単にインパクト勝負ではなく、味は伝統的な江戸前寿司というものをバランスよく掛け合わせています。
また、カナダ産の野菜をどう日本流にアレンジするかというのも、チャレンジであり面白みがあります。野菜寿司の可能性が広がりますし、「いかに野菜を酢飯に合わせるのか?」と問いかけをしながら、いかようにも可能性が広がる気がしています。
V: 日本から絶対の必需品として持ってきたものは?
K: 包丁とお箸ですね。日本食の繊細さは包丁から出ると思っているので、包丁の種類とかも日本はダントツですから。16年愛用している包丁も持ってきました。仕事道具は、自分自身のシェフとしての歴史を象徴している感じがしています。
V: メニューの考案は?
A: 私とシェフで一緒に考えます。3ヶ月ごとに前菜メニューが変わるんですが、固定概念を捨てて、パンクな寿司を提供したいと思っています。せっかく美味しい野菜を扱っているので、お魚の代用としての野菜寿司ではなくて、野菜が主役のお寿司を食べてほしいです。秋は果物の季節なので、フルーツを使った寿司とかもどんどん出していきたいです。
V: 客層はどんな感じですか?
A: カジュアルなCOFU一号店とは違い、130ドルから始まる二号店は、全く違う客層が来ると思っていたんです。でも、嬉しいことに開店して最初の3ヶ月間は、ほぼCOFU一号店のお客様が来店してくれました。こんなにCOFUファンがいてくれたんだと、驚きと共にとても嬉しかったですね。頑張って開けて良かったなと思います。
V: 一号店同様、何かサステイナブルな取り組みはされていますか?
A: 一号店から続く「No Food Waste」の取り組みは変わっていません。野菜の切れ端や使えない部分はソースやスープに活用し、食材を余すことなく使っています。 サステイナブルとは、特定の誰かに依存せず、誰でも続けられる持続可能なビジネスを目指すことだと思うんです。変化を恐れず、去年と同じことに留まらずに進化していく「EVOLVE & RENOVATE」の精神でやっていきたいです。
V: COFU Chinatownでどんな体験をお客様に提供したいですか?
A: 扉を開けた瞬間から日本に来たと思ってもらえるような空間作りを心がけているので、例えば日本に興味があるとか日本に旅行に行きたいと思っている方は、ぜひ一度COFUに来ていただいて、バンクーバーにいながら日本を味わってもらいたいです。また、日本人の方にも、日本に戻ってきたような心地よい空気を提供したいですし、日本人観光客の方にもカナダで食す日本の寿司を楽しんでほしいです。
V: 今後の目標は?
A: ミシュランを取得したいです!後には、グリーンミッシュランも目標にしています。また、将来的にバンクーバーで生まれたこのお寿司を日本に逆輸入したいと思っています。身近な視点からだと、このChinatownの一角のコミュニティを盛り上げる立ち位置になりたいですし、今後はワークショップやイベントなど、面白いことをどんどん発信していって、多種多様な人が集まる場所を作っていきたいと考えています。


COFU Chinatown
Inspired by Zen philosophy and the artistry of Japanese cuisine, COFU offers an omakase-style experience that flows with the seasons. Set in Vancouver, our vegan menu is a quiet celebration of tradition, simplicity, and natural harmony — from elegant nigiri to thoughtfully crafted plant-based dishes. In addition to our omakase counter, the dining area offers a relaxed setting where guests can explore our plant-based dishes à la carte.



































