
VOICE 181
Penny Eder
of
Searamics & Sculpture
Photography - HIRO Interview - MINA

「短い人生、器だってもっと楽しまなくちゃ!」
セラミックアーティスト、Penny Ederさんの自宅兼アトリエは、バンクーバー島・コートニーの海からわずか1ブロック。緑に囲まれた庭の中央には小さな小川が流れ、まるで秘密の楽園のような空間です。運がよければ、海風に乗ってクジラの声が届くこともあるのだとか。創作に没頭するにはこれ以上ない環境ですが、彼女の人生は決して平坦ではありませんでした。
島に移り住む前、Pennyさんは夫とともに20年間ウィスラーでギャラリーを営み、タイルやパブリックアートを制作していました。夏になると所有する船で島々を巡る生活を送り、まさに誰もが憧れる人生そのものでした。
しかし2020年の終わり、彼女がコートニーにやって来た時には、そのすべてを失っていました。離婚、家やギャラリーの喪失。知り合いのいない土地で、ゼロからの再出発。パンデミックの最中だったその時期を、彼女は「あの頃は冬眠しているようだった」と振り返ります。そんな静かな時間の中で、再び彼女の心を動かしたのがセラミックでした。
評判は隣人から隣人へと広がり、今では彼女の作品は4つのローカルギャラリーで紹介されています。ベストセラーの「ウニボウル」、オイスター皿、ムール貝のスプーン、スカシカシパンのプレート、そして最新作の「潮だまり」シリーズの小皿には、ヒトデやタコ、フジツボたちが寄り添い、小さな海の世界が広がります。20年以上の航海で出会った海の生き物や景色が、彼女の作品に息づいているのです。精巧でありながら温かみのあるフォルムには、彼女の手仕事と海への深い愛情が宿っています。
「人生のどん底にいたとき、みんなが ”これはあなたに起こるのではなく、あなたのために起こることなんだよ” と励ましてくれました。でも当時の私は、まったくそうは思えませんでした。でも今なら分かるんです。あの経験があったからこそ、今こうして自分の “幸せな場所” で毎日創作ができている。すべては、今の私にたどり着くための出来事だったんだと。」
壊れ、また形を変えながら積み重ねていく彼女の人生は、まさにセラミックそのもの。
VOICEでは、Pennyさんだけが生み出せる “Searamic” の世界をたどっていきます。
VOICE(V):セラミックアートの世界に入ったきっかけを教えてください。
Penny(P):父はよく家の敷地内でいろいろな構造物を作っていて、セメントを扱うことも多かったんです。その姿をそばで見ていたのが、私の「つくること」への原点だったと思います。
高校卒業後には、OCA(オンタリオ・カレッジ・オブ・アート)の奨学金をいただいたのですが、当時はアーティストとして生きていくイメージが湧かなくて。結局オーストリアに渡ってスキーを教えることにしました。その後は航空会社の客室乗務員として働き、いろいろな経験を積んだ後に、再びアートの道へ戻ってきました。
最初にセラミックに触れたのは、元夫と最初の家を建てていたときです。理想のタイルがどうしても見つからず、「じゃあ自分で作ってみよう!」と思ったのがきっかけでした。そこから知人にカスタム作品を頼まれるようになり、家でのもてなしが大好きだったこともあって、気に入るお皿やサービングディッシュがなければ自分で作っていました。気づけば今のような活動に広がっていて、本当に思いがけない素晴らしい旅のようです。
V:作品づくりのインスピレーションはどこから来るのですか?
P:外に出るだけです! ウィリアムズ・ビーチは私のお気に入りの場所のひとつ。私の作品はすべて、体験やそこで見つけた何かから始まります。海で拾った小さな宝物――貝殻、サンゴの欠片、ウニの殻などを、25年以上ひとつの小さな袋に入れて大切に取ってあります。30年の間に29回引っ越しましたが、その袋だけはずっと一緒に旅をしてきました。
制作を始めるときには、その中からひとつ取り出してじっくり観察します。触れて、匂って、実際に体験したものをもとに、できるだけリアルに表現したいんです。私の頭の中はいつも動き続けていて、見たもの・感じたものすべてが作品の種になります。どの作品も、常に途中経過のような進化の途中なんです。
V:どのようにして、今の独自のスタイルを築いていったのですか?
P:私の作品は、ほとんどすべてが試行錯誤の積み重ねです。技術を磨くには、壊したり、失敗したり、テストを重ねたりする30年くらいの時間が必要かもしれません。たとえ学校に通ったとしても、自分にとって何が合っているのかを見つけるまでには長い時間がかかります。
私は、自分が作りたいものを作るだけです。それが売れたらもちろん嬉しいですが、それが最終的な目的ではありません。私の目的は、自分の内側から湧き上がるインスピレーションを形にすること。
ほかの人の作品はあまり見ないようにしています。自分の創造性や個性が揺らいでしまうからです。
V:Searamics& Sculpture という名前の由来は?
P:ウィスラーにいた頃、私は「白い犬を3匹連れた人」として知られていて、ギャラリーも White Dog Studio Gallery と名づけていました。今も白い犬のマリンがいて、そこに新しく SEARAMIC があります。私は、ひとつの言葉に複数の意味が込められているのが大好きなんです。私の作品はすべて海からインスピレーションを受けていて、この名前はちょっとした言葉遊びから生まれました。ひとつの言葉が3つの意味を持つような、遊び心があって、ほかとは違う名前にしたかったんです。
V:海の人と山の人、どちらだと言えますか?
P:冬の山が大好きなんです。スキーをして育ったので、山頂で横から風が吹きつけるあの感じがたまらない。でも海も本当に好き。私はかに座で、まさに“カニ”なんですよ。かに座の性格を調べると、そのまんま私。家が大好きで、怖くなると殻に閉じこもるタイプなんです。
V:コモックス・バレーのコミュニティについて、どのように感じていますか?
P:島に住みたくて、デンマン島やガブリオラ島を見て回ったんですが、私は田舎で育ったので、もっと自然に囲まれた場所を求めていました。最終的にこのエリアに落ち着けて、本当に良かったと思っています。農場やスモールビジネスがこの地域の魅力そのもの。どこへ行っても、小さなコテージビジネスが元気に活動しているんです。
移住して最初に出会ったのが、Clever Crow Farm の Lia でした。不動産屋から彼女のファームショップのギフトカードをもらって訪ねたことがきっかけで友達になり、そこからコミュニティに溶け込むきっかけを作ってくれました。今年のホリデーシーズンには、私の Moon Shell ボウルと、彼女の BC Sea Salt & Sea Kelp を組み合わせたギフトボックスでコラボレーションもするんですよ!
V:コレクションの中で、特にお気に入りの作品はありますか?
P:作るたびに、その作品が「新しいお気に入り」になるんです。でも、一度だけ本当に手放したくないと思った作品がありました。ムール貝やタコ、フジツボ、底にはヒトデをあしらった、大きなオイスタープラッターです。あまりにも完璧に仕上がって、自分のもとに置いておきたいくらいでした。
最終的にその作品を Salish Sea ギャラリーに持って行って、「手放すのが本当に辛かった」と伝えたんですが、それが数日で売れてしまって。アメリカから来た女性がその作品を見て一目惚れし、私のストーリーも聞いて「大切にします」とギャラリーに伝えてくれたそうです。翌日には、その作品を機内に持ち込めるようにと、わざわざ購入したスーツケースを持って戻ってきたんですよ。あれは間違いなく私の一番のお気に入りでした。作品名は “Black Pearl”。ボウルの隅に、本物のパールをそっと忍ばせてあります。
V:作品を通して伝えたいメッセージはありますか?
P:友人と食事を囲むのが好きで、食べる料理だけでなく、使う器にも物語があるといいなと思っています。だから、自分の好きなレシピからインスピレーションを受けた作品を作り、それぞれの料理に合うようデザインしています。
食材がどう育ち、獲られ、飼育されたかに重きを持つ一方で、器には無頓着になってしまうことがずっと気になっていました。海外生産の大量生産の器には、児童労働や低賃金、環境への影響など、さまざまな問題が潜んでいます。私の作品は、素材から器に至るまでのすべての過程を尊重したいという思いから生まれています。私の器を使うことで、毎日の食事がより意識的で意味のある時間になってくれると嬉しいです。


Searamics & Sculpture
White Dog Studios SEA~Ramics & Sculpture overlooks the Salish Sea on Vancouver Island in beautiful British Columbia.
White Dog Studios are named for her love of the Samoyed dog breed. Penny welcomed Marin Princess of tides a few months after loosing her three such fur faces.
SEA~Ramics and Sculpture was born from Penny’s recent relocation from Whistler, BC
to Vancouver Island where she is now deeply inspired
by the ocean and the magnificent creatures that inhabit it.



































