Photography - HIRO
Text - MINA
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Wild Mountain
Oliver Kienast, Chef-Owner
Credits
Photography - HIRO
Interview - MINA
“私たちは、コミュニティのさまざまな関係性から成り立っています。これらの要素を結びつけ、その中心にレストランを持つこと。それがワイルドマウンテンです”
地元の食材を使い、その食材を輝かせることの大切さを理解しているWild Mountainは、Sooke Habourを見下ろす小高い坂の途中にある小さなレストランです。ハミングバードやミツバチがキッチンガーデンを飛び回り、心地よい海風がパティオを駆け抜けていきます。レストランの入り口には石造のWood-fire ovenがあり、暖かくゲストを出迎えます。Wild Mountainの佇まいの全てが、彼らが唱う「スローフード」の象徴のようです。
スローフードとはファストフードに対して唱えられた考え方で、伝統的な食材やその土地ならではの素材を活かした食べ物をとることで生活に豊かさを持とうと言う運動のことです。
オーナー兼シェフのOliverは、オカナガン北部で育ち、小さな頃からスローフードに関心があったと言います。学校の課外授業でスローフードの農家を見学しに行くと決まった直後、クラスで一番にサインアップしたほどです。そしてシェフになった今、彼の料理の軸となっているのは、子供の頃に食した味。「シェフの間で、私たちはよく初めての食体験について話しますが、その多くは庭でラズベリーを摘んで味わった瞬間です。そのラズベリーはとても衝撃的で風味豊かで、脳に刻み込まれます。食卓でそれができれば、私たちの勝ちですね」
日々細かく変更されるメニューは、Oliverが長年掛けて関係を築いてきた地元の農家、酪農家やフォレジャーのストーリーの集合体です。一皿を構成するその食材にどれだけの時間と愛情と苦労が掛けられているのか。そして、Oliverの手腕で更に洗練されたスローフードを口にすると自然と感謝の念が湧いてきます。Wild Mountainのゲストは、きっと人生で最高のトマトの味や、肉の風味、ソースの味と出会うことでしょう。それは素敵な思い出として持ち帰り、また味わう為にSookeまで足を運ぶことになるのです。Wild Moutainを体験したければ、週4日のディナータイムにしか開店しない為、予約を強くお勧めします。そして時間にはゆとりを持って向かってください。テーブルに優しく添えられたガーデンの草花、サーバーとのフレンドリーな会話、Oliverがじっくりと調理する火の灯火、その全てを楽しみながらゆっくりとWild Mountainの味を堪能して欲しいのです。
Wild Mountain自体がゆっくりと地元に根を広げ成長して来たように、これからも一つ一つの四季をゆっくり重ねながら、人々に食べる喜びを提供し続けていくことでしょう。
VOICE(V):ワイルドマウンテンの成り立ちはどのような経緯でしょうか?
オリバー(O):私の両親はノースオカナガンのアームストロング近くで養蜂をしていて、私は蜜蜂の農場で育ちました。ワイルドマウンテンという名前は両親の蜂蜜農場へのオマージュです。とても質素な始まりで、家族は電気や水道のないワンルームの小屋で暮らしていました。実は私は蜂アレルギーなのですが、もし私が蜂に対してアレルギーを持っていなかったら、私は養蜂師になっていたかもしれません!皮肉なことですが、養蜂農場での暮らしが今の私を作り上げたのです。私は料理にも常に魅了されていました。私の子供時代の味は、母や祖母の庭からの新鮮な果物や野菜を調理し、父は蜂蜜を肉と交換していました。これらの味は季節ごとに非常に顕著で新鮮さに満ちたもので、後に私の料理スタイルに大きな影響を与えました。大人になり、私は料理を追求するためにビクトリアに移住しました。カフェブリオと言うレストランで修行をしました。それはスローフードの価値観を持つファームトゥテーブルのレストランで、都市で料理をする初めての経験で、地域社会の一部であること、育てたものを隣人と共有し、情熱を持って料理をする結びつきを感じました。だから、カフェブリオの食べ物を味わったとき、それが私が欠けていたものだと気づきました。その後、スローフード運動について学び、食材を季節に応じて調達し、食べ物を政治的な行為として捉えるアイデアについて学びました。正しい人々をサポートすることで、世界的で産業的な食品システムを奨励するのではなく、正しい食品システムに参加するという考え方です。私は、倫理的な地域経済をサポートしながらも、地域に根ざしたおいしい食事を作ることが私の進むべき道だと決めました。
V: なぜレストランの場所としてスークを選びましたか?
O: 私は世界的にも有名なスークハーバーハウスで働くためにスークに移住しました。彼らのスローフードの理念に共感し、最終的には彼らのレストランで働き始めました。私はそこで妻のブルックに出会いました。私はここスークでシェフとして10年間過ごし、農家、漁師、採取者、そして食材をもたらすすべての人々と関係を築きました。誰が最高のトマトを育てているのか、どこの森で野生のキノコを摘むべきか、話す相手が誰なのか、全て理解しています。これらの関係が、私に自然界を讃え、レストランの始まりから美味しい料理を作る力を与えてくれているのです。今ではシェフだけでなくレストランのオーナーでもあるため、異なる方法で彼らをサポートできます。リレーションシップバロメーターは、あなた自身と周りの人々を強くするために枝分かれし、お互いに経済的サポート、心の支え、互いへの感謝の念があります。それは素晴らしいことです。ワイルドマウンテンでドアを開き、メニューを提供するには、実にさまざまなビジネスや人々が関わっているのです。
V: ワイルドマウンテンで最初に作成したメニューはどのようなものでしたか?
O: もちろん、近隣の農場から手に入るものだけで作りました!昔はもっと野心的で、当時のメニューは今よりも少し幅広いものでしたがね。農家から週ごとに送られてくる野菜リストを見ては、受け取る野菜の量と種類を提供するお客様の割合に合わせる方法を考えてメニューを作成します。ある意味でクレイジーなことのように聞こえますが、最終的にはすべてうまくいきます。これにより、ほぼ100%地元食材を使用することができます。冬の間の玉ねぎや、レモン、オリーブオイル、イタリア産のハードチーズなど、地域外から調達する必要があるものはほんのわずかです。今では、ウッドファイアードピザも提供していて、これにはスローフードにまつわる素敵なストーリーがあります。天然酵母を使用し、小麦は私たちの豚農家からやってきたもので、元々は豚に餌として育てられ、その後で粉にされます。私たちは自家製のシャルキュトリーと共に、薪火を使ってピザを調理しています。また、ピザのような一般的な料理を洗練された技巧で提供することも興味深いです。焚火を使って調理するのは、味だけでなく気分を良くし、安心感を与えてくれるからです。レストランに来た人々が窯を見て、顔が一瞬で明るくなるのも面白いですよ。このような体験を創造するのも仕事の一つです。私は、チーズピザのようにシンプルなものから、複雑なメニューまで楽しんでいただける場所を提供するよう勤めていますが、どちらにしてもその背後にはストーリーがあります。
V: 8月のメニューには何がありますか?
O: 豆類、イチゴ、ブルーベリーなどが多いですね。そしてトマト、ナス、キュウリなど、夏野菜が登場し始めます。メニューにはクルディテ(薄めにカットした生野菜をドレッシングやマヨネーズなどで味つけした前菜系のサラダ)やビーフタルタルなど、生の食材の提供が増えるでしょう。トマトとナスの季節にはファラフェルを提供するのが好きで、今年は素晴らしいソースシェフのスコット・ウッドが、近くのメトシンと言う町にあるパリーベイファームのマトンの肉を使用して作ったドネア(ロースト肉と野菜をはさみ、好みのソースをかけて食べる一品)に合うソースを提供してくれました。
V: 加盟されているスローフードシェフ・アライアンスについて教えてください。
O: ワイルドマウンテンの前に、私はイタリアで「テラ・マードレ」というスローフードの会議に参加しました。主な目的は、アイデアを共有したりイベントを企画するだけでなく、精神的なサポートや共感のあるシェフたちのグループと連携することでした。ある時、ブリティッシュコロンビア州のスローフードシェフたちが、私の友人ジェシーが経営するガリアノ島のピルグリムと言うレストランで集まり、食事をし、会話を交わしました。キッチンでゼロウェイストを実現する方法や、スローフード産業を前進させ、地球をより良く維持するための方法など、多くのことを共有しました。私たちはライバル心を持って競争するのではなく、お互いを応援しようと努めています。
V: なぜ、週に4日営業、ディナーのみの営業なのですか?
O: それは仕事と生活のバランスを取るためです。私たちは常に長時間働いていますので、長期的に生き残るためにはそのような体制を選ぶ必要があると判断しました。他の3日間はレストランの準備をする日です。農場での収穫や食材の調達、肉は一頭買いしているのでその解体、スープストック作り、また同じ動物の脂肪で肉を調理するために脂肪を加工するなど、多くの工程が含まれます。レストランをオープンする前には数多くのステップがあり、堅実な食事プログラムを持つために必要な時間です。また、スタッフには少し休憩を取る機会を提供し、リフレッシュされて長時間一生懸命働くことができるようにします。これらの3日間は新しい農場を見つけるためのものでもあり、この時間に私はシェフとして成長できるのです。
V: キッチンで実践しているサステイナブルな取り組みは何ですか?
O: 全てをコンポストして農家やスタッフの庭に肥料として戻す取り組みをしています。農家が飼っている豚や鶏のために小さなくずまで保存し、食材の廃棄物はほとんどありません。ハーブの茎もスープストックの一部になります。普段あまり使わない小さなものが、私たちの料理の一部になることができるのは興味深いです。たとえば、自然発酵のホットソース作りで残ったカスを乾燥させて発酵チリパウダーを作るなど、色々と工夫しています。
V: ワイルドマウンテンはコミュニティでどのような役割を果たしていますか?
O: 年末の数字を見ると、私たちがコミュニティに還元する金額がどれほど大きいかが分かります。また、私たちの元で働き、私たちの哲学を学んだ人々が、世に出てその考えを周りの人々に伝えることを願っています。この世界で大金を稼ぐことだけが重要ではありません。質の良い生活と良好な人間関係が最も重要です。私たちの元で経験を積んだ若い人々にとって、それが最も大きな価値観として影響を与えることができればと思います。
V: スローフードレストランを始めたいと考えている人にアドバイスはありますか?
O: スローフードに取り組む価値はとてもあります。それは人生の豊かさと質の良い生活をもたらしてくれるからです。自分自身の料理の旅を通じて、最も興味深く素晴らしい人々に出会い、彼らは大切な友人になりました。大手企業からの仕入れで少し多くのお金を稼ぐことと引き換えに、その関係を交換することはありえません。人生に豊かさをもたらしてくれるのは多様性です。その道を進むことでさまざまな人々や味覚に出会えます。お金に基づいたことをすると、通常は味が失われます。スローフードの哲学を取り入れることで、おいしいだけでなく、幸福で健康的な生活を手に入れることができるでしょう。
V: スークの1番の魅力は何だと思いますか?
O: 私たちのコミュニティは陸と海をつなげています。海からは魚、貝類、甲殻類、海藻が取れ、キノコ、ベリー、花々などが豊富な森があり、海岸線には食べられるものが沢山生息しています。野生の食材は、焚火を使って調理すると本当に素晴らしい組み合わせになります。焚火を使う調理は、もはや私のアイデンティティの一部となっています。
V: コミュニティで一つだけ変えたいことは何ですか?
O: 大きな変化がコミュニティに訪れており、Citta Slow(スローフードの派生組織)の価値観をもっと取り入れ、ファストフードレストランや大型店の進出を止めてほしいと思います。
V: スークでのお気に入りの過ごし方を教えていただけますか?
O: スーク・ポットホールズ州立公園が大好きです。ビーチでの焚き火や夕日を眺めること、友人や愛犬のミツィと一緒にビーチで料理することが最高の時間です。