Photography - HIRO
Text - MINA
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Sheringham Distillery
Jason MacIsaac,
Co-founder & Master Distiller
Credits
Photography - HIRO
Interview - MINA
”フレンチビーチを歩いていたときに、シーサイドジンのアイディアが浮かびました。
海岸沿いにはワイルドローズが咲き、スークの風が木々の間をささやいていました。
「この感覚をどうやってジンで表現できるだろう?」と”
Sheringhamの名前の由来は、バンクーバー島にある小さなコミュニティ、Shirleyの旧名称です。真っ青な太平洋を望む海岸沿いには1912年に創設した灯台があり、その背後には太平洋温暖雨林と呼ばれる深い森林が広がります。ここは海と山が交わる場所。そんな自然豊かな美しい情景を一つずつボトリングするかのように、Sheringhamの商品は作られています。彼らの代表的商品であるSeaside Ginは、バンクーバー島沖合でサステイナブルに採取された海藻と海辺に咲くNootka Roseの花びらを原料に、まるでビーチを散歩しているかのような海風漂う爽やかな香りです。日本のインスピレーションを受けたBeacon (Kazuki) Ginは、春に灯台周辺に咲き誇る桜と島内で栽培されている緑茶のフルーティーフローラルの香りが漂います。森の香りも忘れてはいけません。新しくラインに加わったRaincoast Ginには、ネトルとオークモスが入り、雨に濡れた太平洋温暖雨林の湿った木々と土の香りそのものです。
Jasonさんは自身が蒸留するスピリッツを「シェフの創作」と呼んでいます。蒸留ビジネスを始める以前、長年にわたりプライベートシェフとしてあらゆる食材を扱って来た彼だからこそ、バンクーバー島の情景と香りをそのままGinとして表現することが出来るのでしょう。
Shirleyから生まれた小さな蒸留所は、今やヨーロッパ、北米、アジアと、世界中に島のエッセンスを届けるグローバエルブランドに急成長しています。目を閉じてゆっくり深呼吸するように、Sherigham のGinを味わっていくと、まるでバンクーバー島へ小旅行に行ったような気持ちになると同時に、どこかノスタルジアを感じさせてくれます。
元シェフJasonさんの蒸留の旅路と、Sherighamの地元愛のこだわりを語っていただきました。
VOICE(V): シェリンガムのビジネスはどのようにして生まれたのですか?
ジェイソン(J): 私の経歴は料理の世界です。フレンチ料理と地元の食材に焦点を当てて、23年間プロの料理人として働いていました。豊富で質の良い、そして季節に合った食材を使って、最高のメニューを作っていました。料理の傍ら、私は蒸留に対する熱い情熱があり、10年ほど前ジョーダンリバーに住んでいた頃、最初の蒸留器を自作しました。その後、アマチュアとして10年ほどの経験を積んだ後、今の蒸留ビジネスを始めることにしました。私の妻、アレインはセールスとマーケティングのバックグラウンドを持つ、優れたビジネスウーマンです。ある日、彼女は市場に高品質のジンを作るためのチャンスを見つけ、私が素晴らしいジンを作れると思ったようです。そこで、私たちは他のキャリアを一旦置いて、蒸留ビジネスを始めることに決めました。最初は私たちの住んでいたシャーリーの敷地内に小さなスペースを設け、馬小屋を蒸留所に改装して3年間営業しました。その後、さらなる拡大が必要になり場所を移転しました。
V: 蒸留技術をどのように学びましたか?
J: 多くの本を読みましたし、BC州のパイオニア的な蒸留士で、ビクトリア・ジンの創造者でもあるケン・ウィンチェスターさんは私の師でした。彼は食べ物やワインが大好きなので、野生のキノコやジビエ、ダックコンフィなどを持ち込んでは質問し、また次の訪問の際に新しい食事を持っていきアドバイスを頂く、と言うことを繰り返していましたね。本当に素晴らしい時間を共に過ごさせてもらいました。
V: シェリンガムで最初に作った商品は何でしたか?
J: 代表作でもあるシーサイドジンです。フレンチビーチの岸辺を歩いていたときに、シーサイドジンのアイディアが浮かんだんです。海沿いにはワイルドローズが咲いていて、風が木々の間をささやいていました。そこで、「この感覚をどうやって捉えて、ジンに表現できるだろう?」と考えました。海の感覚を表現するために海藻(昆布)を取り入れ、花の香りにはバラの花びらとラベンダーを使用しました。もちろん、シトラス、ジュニパー、コリアンダー、カルダモンもスパイスの要素として加えました。私は、料理で作るような多くの味わいがある製品を作りたかったのですが、すべての風味がバランスよく融合するような深みのある製品を作り上げました。シーサイドジンは単体で飲むこともできますし、シンプルなカクテルでも複雑なカクテルでも、すべてのボタニカルの風味がバランス良く感じられるように仕上がっています。
V: シーサイドジンの開発にはどれくらいの時間がかかりましたか?
J: アレインはクリスマスに向けてジンが必要だと言い出し、6週間後には完成させなければならないという厳しい状況でした。その6週間は非常に長くて厳しいもので、睡眠を削って働かなければならない日々でしたよ!当時私はジンを飲む習慣がなかったので、料理人としての技術をすべて蒸留に取り入れました。地元と海外の様々なジンを並べて、一つ一つ飲んで味を評価し、料理人が料理や味を創り出すように、プロファイルをカテゴリー分けしていきました。8つの異なる試作品、レシピ、蒸留方法、材料の試行錯誤の末、私たちは最終的にシーサイドジンとして知られるレシピにたどり着きました。それ以来、同じレシピを使い続けています。
V: 蒸留所でのサステイナブルな取り組みについて教えてください。
J: 私たちはBC州の認定を受けたグリーンビジネスであり、夏の終わりまでにはカーボンニュートラルを目指しています。また、B Corpの認定を取得する予定です。例えば、コンデンサーからの水を再利用する水リサイクルプログラムを実施しています。ボイラーには動物や植物のバイオガスから得られる再生可能な天然ガスを使用しています。蒸留の副産物を利用して、新しいビターズと呼ばれるリキュール酒のラインアップを近々発売する予定です。できる限り地元の収穫者や生産者と協力するよう心がけ、未来の世代のためと地球の健康のために左ステイナビリティーを意識することが重要だと考えています。
V: 事業が拡大するにつれて、シェリンガム蒸留所の不変の原則は何ですか?
J: 私たちは世界で最も親しみやすいジンを目指しています。それと同時に、品質と本物のものつくりにもこだわり続けたいと思っています。
V: 地域社会で果たす役割は何だと考えていますか?
J: 秋には毎月ハッピーアワーイベントを開催して、地元のシェフやレストランの料理を披露する予定です。そのイベントを通じて人々を一堂に集め、特別な体験を提供したいと考えています。新拠点のラングフォード市からは温かく歓迎されているので、地元のビジネス同士が協力し合う機会を増やすことが目標です。
V: シェリンガムの今後の展望は何ですか?
J: 去年の秋にはシアトルのクライメイトプレッジアリーナから連絡があり、彼らのアリーナやNHLのホッケーチーム、シアトルクラーケンの公式ジンになる依頼がありました。これによりブランドの認知度が高まり、アメリカやその他の地域での拡大が見込めるようになりました。シェリンガムの名前が広がって、グローバルブランドとなることが今後の展望です。
V: 蒸留ビジネスを始める人々にアドバイスはありますか?
J: 一生懸命働き、長時間努力し、何が必要でもやり遂げることです。これは小規模ビジネスの基本です。数多くの寝不足や絶望感を感じる日々があるかもしれませんが、それに耐え抜けば非常に報われる経験になるでしょう。
V: 南バンクーバー島の一番の魅力は何だと思いますか?
J: 多くの素晴らしい要素が一つになって表れていると感じます!険しい海岸線、海、森林、雨、ハイキング、主要な都市にアクセス良好なこと、島内に豊富な質の良い生産者がいることなどがあります。私たちは非常に幸運な地域に住んでいます。
V: コミュニティで一つだけ変えたいことは何ですか?
J: 蒸留コミュニティで変えたいこととしては、「クラフト」(小規模)蒸留所の最大許容年間生産量を増やしてほしいと思います。私たちは限界を超えて「商業」と言うタイトルになりましたが、クラフト蒸留業者には成長の余地がまだまだあります。
V: この地域でのお気に入りの場所はどこですか?
J: 家族や友人たちと一緒にいればどこでも、私にとっては特別な場所です。