VOICE -145 Bruce and Will Miller
@The Beer Farmers

「私たちは農業という仕事から人々を魅了するサービスが出来ないか、ずっと探し続けて来ました。

そして今、私たちはビールを醸造し、また農業を営んでいます。The Beer Farmersは私たちが過去に成し遂げてきたこと、そしてこれから何をしていくのかを人々に示す場所です。」

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自分の食べ物がどこから来るのかを知ることはとても重要なことです。それは世界的なパンデミックと食糧危機によりいっそう際立ちました。The Beer Farmersは、ビールがどこで作られているかを見られる、他では体験出来ないサービスを提供しています。ここペンバートンバレーの中心地の農場で原材料となる大麦を栽培し、ビールを醸造するユニークなブルーワリーです。

ところで、ペンバートンバレーが「北米の種芋生産の中心地」であることをご存じですか。
高い山々に囲まれ隔離されたこの谷では、ウイルスに感染しづらい世界トップクラスの種芋が収穫されていることで有名です。1912年からこの地で農業を営むミラー一家にとっても、種芋生産はとても重要な役割を持っています。当時40軒あった種芋農家のうち、ミラー家は当初から残っている希少な農家のひとつです。4代目となるミラー家のオーガニック農場は、 Across the Creek Organicsで種芋生産を、The Beer Farmersで大麦とホップの栽培を行なっています。
私たちは、「ほとんどのものが他の地域から来る」時代に生きていますが、The Beer Farmersでは、私たちの食べ物がどこから来るかを人々に示しています。美しい草原の真ん中にある古い種芋加工場は、趣のあるテイスティングルームに生まれ変わりました。広い屋外のパティオからは、農場、向かいの大麦畑、壮大な山々、ひまわり畑、農場の動物たちなど、息を呑むような景色を眺めることができます。2018年にオープンして以来、The Beer Farmersはペンバートンバレーの活気あるランドマークとして存在価値を生み出しました。

しかし、彼らの成功は一夜にして実現したわけではありません。100年にわたり農業に励み、ペンバートンのコミュニティを築いてきましたが、農家の苦難と不安定さも繰り返し経験してきました。そして、2018年一念発起し、クラフトビール事業に乗り出したのです。彼らのビールは、彼らが身をおく環境だけでなく、その土地で彼らが流してきた何世代にもわたる愛と汗と涙を反映しているのです。The Beer Farmersのストーリーは、農業を営む彼らの人生を祝福するものです。VOICEでは、3代目のブルースと4代目のウィルに、ミラー家の食と土地の物語を語ってもらいました。

VOICE(V): ペンバートンでの家族の歴史について教えてください。

Bruce (B): 私は3代目のミラー家が営む農場のオーナーです。ミラー家の歴史は1895年、スコットランド出身の祖父、W.M.ミラーが初めてペンバートンにやってきた時まで遡ります。当時16歳のW.M.ミラーは、南アフリカ、香港、スリランカを冒険した後、バンクーバーで船を降り、周辺を探検することを決意しました。ペンバートンに到着した彼は、現在のミラー・クリーク(彼の名前に由来する)の土地を購入し、家を建てました。(現在ペンバートン博物館に移築・展示されている)しかし1年ほどで家を売却し、ゴールドラッシュの北米をユーコンやアラスカまで、数々の冒険を繰り広げていきました。その後、スコットランドに一時帰国し、アイルランドに立ち寄った際に私の祖母テレサに出会いました。 やがて二人は結婚し、ペンバートンに戻ってきました。彼らはこの場所に入植した最初の家族です。夫妻はこの農場を購入し、斧やのこぎり、馬の力を使って、農場を作るためにたくさんの苦労を重ねました。ジャガイモと畜産が主なビジネスで、副収入として木材の伐採、狩猟、わな猟を行っていました。その後1950年代から1960年代にかけて、ペンバートンの種芋は評判を呼び、他の農家やアメリカに売るためにじゃがいもを栽培するようになりました。私が農業を始めたのは高校生のときで、父と一緒に働いていました。夏には山に登り、美しい湖や草原で釣りや狩りをするのが、家族の伝統でした。35年ほど前からは、牛を高山に放牧していました。私が父ドナルドから農場を引き継いだ後、この農場をオーガニック認証に移行し、数年前には当初500エーカーあった土地のうち240エーカーをカナダ自然保護協会に売却しました。現在のその場所は、ライアン・クリーク保全地域と呼ばれ、野生動物のために保全されています。私たちは250エーカーの土地で農業を営んでいますが、そのうち5エーカーは、私たちの素晴らしい農業パートナーであるLaughing Crow Organics Farmにリースしています。そして長年の計画の末、2018年ついにThe Beer Farmersをオープンしました。ビール醸造所では、私たちの家族の伝統、興味深い歴史、そして一緒に行った旅行や冒険の記録を紹介したいと思っています。"」

 

V: なぜ、農場でビール醸造所を開こうと思ったのですか?

 

B:「 120年間、この土地で農業を営んできましたが、時代とともに経済が変わり、需要が変わり、そして世の中が変わりました。私たちはそのような状況に対応するため、考え、より多くの収入を得るためにさまざまなことを試してきました。毎年8月には、ペンバートンバレーでSlow Food Cycle Sundayが開催され、年に一度、3000人以上のサイクリストがやってきます。妻のブレンダは以前から自家製ビールを造っていたのですが、ある年、彼女がSlow Food Cycle Sundayでビールを売ろうと言い出したんです。それがきっかけとなり、どんどんアイディアが広がっていきました。長男のウィルも都市から戻り、より大規模で長期的なプロジェクトとなりました。今年で5年目ですが、オープン以来多くの人に支持されています。
ライセンス取得するまでの最初の4ヶ月間は、テイスティングだけのスタイルを提供していました。それは大変な作業でしたよ。幸いなことに、今はソーシャルメディアの時代で、私たちのビジネスをネットで見つけてくれる人も多いようです。クラフトビールを提供する場所は、とても人気のある観光地的存在になっています。私たちの農場に来て、座ってビールを飲み、醸造所や農場、土地の歴史を知ることを皆さん楽しんでいます。ブレンダは醸造責任者で、これまでに400種類のビールを造ってきました。5人の息子たちもみんな戻ってきて、ビール醸造事業に携わることを楽しんでいます。」

V: あなたのブルワリーの特徴は何ですか?

Will(W):「私たちは農場地域にいることをとても幸運に思っています。ここの環境こそが、シンプルなビールを美味しく、潤沢に、洗練されたものにすることを可能にします。私たちのラガーはとてもシンプルなビールですが、一番人気があります。都市の醸造所では、通常このようなことはありません。私たちのビールの中には、原材料すべてを私たちの農場で生産しているものもあります。秋には大麦を収穫して麦芽を作り、翌年それを醸造します。醸造の準備には1年半を要しますが、ここでしか出来ないとても特別な工程です。

通常、一度に8~10種類のビールをつくります。レギュラーメニューのビールは5種類で、季節ごとにローテーションを組んでいます。夏にはサワーやフルーツ系のビール、冬にはダークで強いビールを作ります。代表的なビールはCover Crop Hazy IPAで、みんなに愛されていますし、Locals Only Lagerも人気があります。」

B:「私たちはペンバートンの観光地の1つになっていることにすぐに気づきました。これは予想外でした。今では夏の間フードトラックも出していますが、それ自体もう一つのビジネスに育って来ています。そこでは古き良きダイナーのような雰囲気で、美味しく、ベーシックなメニューを提供しています。8月ジャガイモの収穫が終わると、その日のうちにフードトラックでフライドポテトを作ります。また幸運なことに、Laughing Crow Organics Farmと素晴らしいパートナーシップを結んでいます。ファームスタンドスペースを共有し、彼らの花をブルワリーでも販売しています。毎年夏にはひまわり迷路、秋にはパンプキンパッチが開催され、そこにも多くの人が訪れています。

V: ペンバートンでは気候変動の影響を感じていますか?

 

W:「ペンバートンでは、すでに異常気象が常態化していますが、その影響は今ではさらに極端になっています。昨年夏の猛暑時は48度まで上がりました。そしてこの辺りはすべて氾濫原です。今後10年以内に何かしら対策を講じなければ、水没してしまう可能性もあります。」

B:「私たちは、農繁期という短い時間の中で仕事をしなければなりません。春か秋どちらかの気候変動で、栽培の機会が全て失われる可能性もあります。そういった面で種芋は、温帯気候で栽培するのに適した非常に耐性のある作物です。」

V: ペンバートンのコミュニティーは、これまでどのように変化して来ましたか?

B:「子供の頃、私たちはあまり町に行くことがありませんでした。その代わり、馬やポニーに乗ってよく冒険に出かけたものです。特にこの10年で、状況は更に大きく変わりました。農家も例外ではありません。例えば、私たちが農場にビール醸造所を建てたように、状況は変化しています。ビール醸造所を通じて、様々な人に出会い知り合うことができます。変化という点では、それが最高の変化ですね。

V: 農場での普段の一日について教えてください。

 

B:「私は朝起きたら、いつもコンピューターに向くことから一日が始まります。そこに息子のウィルがやってきて農場とビール醸造所について日常業務の打ち合わせをし、将来のプロジェクトについても話し合います。その後、妻のブレンダがやってきてビールビジネスの話をします。話が一通り終えたら、外に出て仕事をします。金曜日から日曜日までは、フードトラックで調理をします。自分が自らフードトラックで作業することで、ビジネスの状況を把握し、スタッフに仕事の指示を出しやすくなります。また月曜日から木曜日までは、ジャガイモの灌漑を整えたり、羊を外に出したりと、農場の仕事をしています。

V: 農場以外での生活を想像したことはありますか?

 

B:「いえ。でも、妻から何度か勧められたことはありますよ!私たちのビジネスは世代を超えて成り立っています。私の父はよく、「自分は怠け者で、仕事を避けようとしていた。」と言っていましたが、私の記憶では、彼は最もよく働く男でした。それを証拠に彼が築き上げてきたものが、私たちが今できること、より良いことに繋がっています。きっと父親も同じように祖父からバトンを受け取った事でしょう。家族のより良い未来のために、何世代にもわたって苦労を重ねて来ました。我々夫婦も同じように子供を育てました。子供たちは成長し、彼らは農場から離れたいと言うこともありましたが、今は皆戻ってきています。特にビール醸造所では、どの子供たちもビールづくりや麦の栽培に携わりたがっています。私の中では私は怠け者なのですが、子供たちは一生懸命働いている父親と思っているでしょう。逆に、子供たちから賢く働くすべを学んでいますよ。」

V: あなたにとって、食とは何ですか?

 

B:「食べ物を育てていると、その文化がよく理解できるようになります。食が育つには時間がかかります。若いころは四季があると思っていましたが、毎日畑にいると、小さな一つ一つのプロセスの変化を感じ、むしろ52もの季節があることに気づきます。生産時期が始まる最初に土の中の微生物の匂いを嗅いだ瞬間から、作物が育ち、実りを付けるまでを見ることが出来るのです。」