Solvero Wines
「ワインの真実。私たちの試みをオープンにし、土地の恵を直接ボトルに封じ込める。そのような事を心がけています」
今年の2022年1月に初のヴィンテージをリリースし、Garnet Valleyにデビューしました。サマーランドから北西に車で20分ほど走ったところにあるこの葡萄畑は、風景や生息する動物たち、そして全体的にのんびりとして静かな環境も、一般的に知られるサマーランドの雰囲気とは違った趣があります。
2012年、Mattは家族とオカナガンで作られるピノ・ノワールについて、その善し悪しを真剣に話し合い始めました。その問題点を洗い出し、寒い気候で、ピノ・ノワールを作れる、より繊細でニュアンスに富んだ特徴を発揮できる場所を探し求めました。2014年、MattがGarnet Valleyでこの土地を見つけたとき、そこは森に覆われた山の斜面で、ブドウ畑も何もありませんでした。2年がかりで土地を整地し、植樹のための準備を行い、2016年に5つの畑のブロックと7つのクローンピノ・ノワールを植え、2017年にはシャルドネも植えました。30エーカーの敷地のうち11エーカーは既に葡萄畑に変わり、最終的には16エーカーのブルゴーニュ品種が増える計画と共に、来年はガメイも加わる予定です。
2019年はSolvero Winesにとってピノ・ノワールのファーストヴィンテージの年となりました。翌2020年にはピノ・ノワールとシャルドネの両方を生産し、昨年2021年にはロゼとピノ・グリがラインナップに加わりました。今年6月にはOkanagan Wine Clubを通じ、各ワイン150本をリリースしたところ、数時間で全て完売したのは今後の大いなる明るい展望となりました。 これからの数年間は、ガメイ、トラディショナル製法のスパークリング、そしてサマーランドにある4エーカーの自社畑のリースリングなどのラインナップ拡大を図っていく予定です。現在の生産量は600ケース弱ですが、今後数年で約6,000ケースまで増加する予定でいます。また、25585 Wildhorse Roadに新しいワイナリーとテイスティング・ルームを建設中で着々と拡大の途を辿っているSolvero Winesですが、可能な限り小規模でサステナブルなビジネスを維持することに力を注いでいます。
VOICEがMattとAlisonに会うために、あまり人が通らないGarnet Valleyを車で走ったとき、私たちはエキサイティングなプロジェクトを目撃することになると直感しました。ピノ・ノワールやシャルドネの愛好家、そしてすべてのワイン愛好家にとって、Solvero Winesはオカナガンの新しい目的地になることでしょう。ワイナリーは少し離れていますが、ワインの真実を知るために、少し遠出してもきっと満足できるはずです。
Matt Sartor
Founder
Alison Moyes
Winemaker and
General Manager
Photography - HIRO
Interview -MINA
Credits
VOICE (V):ワイン業界に入ったきっかけはなんですか?
Matt(M):「大学を卒業後、カルガリーのセレクトショップでワインを販売するようになりました。時間がないときは、本を読んでワインについてもっと学ぶ機会を得ていました。ほとんどの時間をブドウ栽培についての本を読み進み、自分が追求したいのはこれだ、と心に決めました。2010年にオカナガンに移り住み、オカナガン・カレッジのブドウ栽培コースに入学し、そこから雪だるま式にすべてが始まりました。」
Alison(A):「オカナガンでは15年ほど前からワインを造っています。私はノバスコシア州のダルハウジー大学で微生物学を専攻していた時にワインの世界に入りました。酵母の遺伝学にフォーカスしていましたが、当時は将来自分がその道に進むとは思ってもいませんでした。学位取得の最後の時期にレストランでアルバイトをしていたときにワインに出会い、そのあらゆる側面に惚れ込んでしまったんです。そしてソムリエになりました。数年働いた後、ワインの芸術的な側面と自分の科学的な背景を組み合わせたいと思うようになりました。いろいろ調べた結果、オンタリオ州のブロック大学で醸造学とブドウ栽培のプログラムに入学しました。その学位取得の一環として、一時的な労働契約でBC州にやってきました。B.C.のライフスタイルとブドウ栽培の可能性に魅了され、論文を書き上げた後、私はオカナガン地方に即移住しました。
Osooyos Laroseでセラーハンドとして数年働いた後、Stoneboat Vineyardsで5年、Liquidityでさらに6年ワインメーカーを務め、2021年にSolveroに加わりました。Mattとは数年前から知り合いで、Garnet Valleyでの彼の歩みを当時から追っていました。実際、彼がここに葡萄の苗木を植えると決めたとき、Liquidityで樽試飲をしつつ、さまざまな選択肢と何がうまくいく可能性があるかについて話をしました。もちろん私が決定したわけではありませんが、最初からこのプロジェクトに関わっているような感覚があります。2019年に彼がコンサルタントと作った最初のピノ・ノワールを試飲したところ、美しさと強さ、豊かな果実味、溶け込んだタンニン、低いアルコールと、抜群の出来栄えでした。Garnet Valleyの土地柄、オカナガンの他の場所よりも一般的に低い糖度で葡萄が熟成されます。私が好きなタイプのワインスタイルであり、私が作りたい、飲みたいワインです。」
V: Garnet Valleyが隠れ家的存在である理由は何だと思いますか?
M:「私の家族は、何年も前からブドウを栽培するのに適した場所を探していました。10年前に初めて車で来たときは、ほとんど干草と牧場ばかりでした。この土地は1年半前から売りに出されていたので、一度見てみようと思ったんです」。長い間売りに出されていたのは、ブドウ畑を作るには莫大な労働力が必要だと思われていたからかもしれない。私たちが注目した点は、狭い谷間の地形と、寒い気候を好むピノ・ノワールに最適なやや少なめの日照時間だけでした。」
A:「この土地への参入障壁となり得るのはブドウ畑を作ることが困難だからです。急な斜面と岩石が混在する地形のため、植樹にはかなりの労力が必要です。しかし、このエリアには他にもいくつかブドウ畑があり、Garnet Valley Road沿いにはブドウが植えられている物件も点在しています。またOkanagan Crush Pad WineryはGarnet Valley Ranchという広大な敷地を開発しており、非常に大きな可能性を持っています。Garnet Valleyにはたくさんの可能性があると思います。」
V: 新生ワイナリーで働くのは大変ですか?
A:「今、私は1人でたくさんの役をこなしています。ワインメーカー、GM、セールス、マーケティング、そして簿記係だったりたくさんですが楽しいチャレンジです。ゼロのスタート地点から自分が携われる機会なんて今までありませんでしたから。誰かの哲学やアイデアを受け継ぐわけでもなく、間違いがあれば自分の責任になる。私はブランドコンセプトやそのネーミング自体には関わっていませんが、クラシックなラベル、ワインに対する伝統的な作り方、そしてSolvero Winesが象徴する本物の哲学が大好きです。本当に心に響きました。私はワインづくりにおける伝統性が好きなのですが、この場所はまさにぴったりな印象を持ちます。私たちは将来的に多くの可能性を秘めているSolvero Winesで、その実現に貢献することに日々興奮しています。」
V: Solveroという名前はどういう意味ですか?
A:「ラテン語からの訳で「土の真実」を意味します。 持続可能、再生可能な農業という私たちの哲学を表しています。」
V: ブドウ畑やワイン醸造において、どのようなサステナブルな取り組みを行っているのでしょうか?
A:「ワイン造りの観点からは、できるだけ添加物を使わず、手を加えずに仕事をすることが私の哲学です。Garnet Valleyで栽培しているブドウは、酸の調整さえ必要ありません。また、自然発酵を行うことで味に複雑さが増すため、できるだけ自然発酵を促すようにしています。
畑に関しては、予防的なブドウ栽培を中心がなので、綿密なキャノピー管理は大きなポイントです。また雑草の散布や殺虫剤を使用しない取り組みも行っています。その戦略のひとつが、ブドウの木の下にわらを敷いて雑草を抑制することです。これは、土壌に有機物を加え、水分を保持する役割も果たします。私たちは自然の土壌改良材や堆肥を使い、土壌の栄養状態をさらに良くしています。
Mattは本質的な土壌構造を維持することを尊重しており、重機やトラクターによって引き起こされる土壌圧縮を可能な限り最小限に抑えています。私たちの高密度のシャルドネ区画では、トラクターを走らせることさえ出来ません。なのですべて手作業で行う必要があるのです。
敷地内には春になるとカットワームを食べるニワトリやアヒルの群れがいます。さらには、いくつかの果樹や将来的な菜園プロジェクトもあります。いずれは豚も飼い、テイスティングルームでシャルキュトリーとしてワインとペアリングすることも考えています。」
V: Solvero Winesの宣伝はどのようにしていますか?
A:「業界内では、サマーランドを中心に多くのワイナリーと交流しているので、すでに多くの人たちが私たちのことを知っています。レストランや小売店との打ち合わせのためにバンクーバーにも足を運びますが、私たちのワインがバンクーバーの一部の棚に並んでいるのを見ることができるのは嬉しい限りです。Marquis Wine CellarsやKitsilano Wine Cellarのようなお店は、非常に大きな支援者です。また、Forageなどバンクーバーのいくつかのレストランでは、私たちのワインをメニューに載せてくれています。 私たちのワイン造りのスタイルは、ファーム・トゥ・テーブルの哲学に合っていると思いますし、料理との組み合わせのオプションとして大きな可能性を与えてくれます。それ以外では、オカナガンの数カ所で販売されているほか、ウェブサイトを通じてオンラインで直接購入もできます。」
M:「今は少量生産で、無理に押し出すことに集中しないようにしています。ゆっくり、そして持続的に成長していきたいと考えているので、少しずつ私たちの名前を広めていくつもりです。願わくば、私たちとのコラボレーションしたい小売店やレストランがもっと増えてほしいですね。」
V: オカナガンのワインメーカーコミュニティはどうですか?
M:「この土地でのプロジェクトを検討していたとき、Okanagan Crush Pad Wineryがそう遠くない場所で植林をしていたので、話を聞いてみたところ、この地域が私たちが思っているような特別な場所であることを検証するためのあらゆる調査内容をオープンにしてくれたのです。シェアすることで皆の参入障壁が少し小さくなる。将来的には、この谷のコミュニティーリーダーになりたいと考えています。」
A:「この数年、とてもポジティブな変化が起きていると思います。オカナガンでワイン造りを始めた当初は、皆保守的で企業秘密を保持している傾向にありましたが、今はアイデアや知識をオープンに共有することを奨励する業界へと変化してきました。BC州全体のワインの質を向上させるために協力し合えば、誰もが恩恵を受けることができます。 そのための最良の方法は、お互いの経験から学ぶことです。」
V: ワイナリーで働く最大の喜びは何ですか?
A:「私にとって、それは常に学び続けることです。毎年、いや毎日、ブドウ畑とワイナリーで何か違うことが起こっています。『昨年と同じようにXYZのステップを踏もう!』なんてレシピは存在しません。ワイン造りとは、季節やブドウ畑で起きていることに適応し、進化していくことなのです。それが魅力的で楽しいんです。」
M:「肉体労働をしながら喜びを感じる。自然の中にいることが本当に好きです!」
V: もし、ワインメーカーでないとしたら、何になりたいですか?
A:「正直なところ、全く分かりません!」高校から大学にかけて、私は科学関連の科目、特に生物学と生化学が好きで得意でした。ワインに出会い、その多様性と美しさに触れたとき、ピンときたのです。科学と芸術が完璧なバランスで共存している。それを発見した時から、他の選択は考えられなくなりました。」