Denman Island Heritage Apples
Kate Janeway
Credits
Photography - HIRO
Interview -MINA
「ここのコミュニティは、私がデンマン島にいる大きな理由の一つです。みんなが本当に気を配りながら、ここをより良い場所にしようと努力しています。そんな場所に住めるのは、とても幸運なことだと思います」
庭でリンゴの木を育てたい人、小さな果樹園を始めたい人は、デンマン島・ヘリテージ・アップルズをお勧めします。あなたとあなたのリンゴの木ときっと寄り添ってくれることでしょう。
デンマン島は、バンクーバー島中央部の東岸に位置しています。バックリーベイからフェリーを10分ほど乗ると、そこは静寂と魔法に包まれたパラダイスです。デンマン島は、近隣のガルフ諸島に比べても、とても静かでのんびりしています。またシンプルな島の暮らしに根付いた興味深いスモールビジネスもたくさんあります。
デンマン島には約半世紀前からリンゴのビジネスが存在しています。70年代、4組の夫婦がそれぞれ1,000本のリンゴの苗木を植えて有機栽培をしようと決めたのがきっかけでした。そこで実ったリンゴはバンクーバーにあるグランビルアイランドマーケットで何年も通い売り続けられました。それから40年が経ち、現在では当初のリンゴの木が残っている土地は数少なくなりました。
デンマン島・ヘリテージ・アップルズのケイトさんは、「私のやっている事は何も新しいことではなく、島のリンゴ文化の伝統を受け継いでいるだけ。」と言います。ケイトさんは、地元の夫婦が引退するタイミングで、母親と一緒にこのナーサリー(苗木)ビジネスを引き継ぎました。「私の知識の多くは、1対1の個人指導から得たものです。ジェーンとラリーは、彼らが知っていることのすべてを私たちに教えてくれました。資源保護、パーマカルチャー、地域開発のバックグラウンドを持つケイトと、園芸のバックグラウンドを持つ彼女の母親が、5エーカーの有機栽培の土地で伝統的なリンゴの苗木の繁殖を専門とするこの小さなビジネスを運営しています。ベイネス湾を見下ろす美しい土地で、受粉を促す花々や青々とした緑に囲まれ、1890年から育つ守護神のようなリンゴの古木を含めすべてが幸せそうに見えます。この場所には、古いものと新しいものが融合し特別な時間が流れています。現在、オーナーであるケイトは、このユニークなヘリテージアップルを守る使命を受け継ぎ、紡ぎ続けているのです。
VOICE (V): デンマン島に来られたきっかけは?
Kate(K): 「UBCで資源保全の学位を取得したとき、私は有機農業のアイデアに惚れ込みました。有機農業やパーマカルチャー、そして母が園芸師だった事もあり、私たち家族はバンクーバーを離れ新しい冒険の旅に出ることを決意しました。デンマン島の前にもいろいろな島を見て周りましたが、バックリーベイを出てデンマン島にフェリーから降り立ったとき、ここはどこか違う場所だと突然感じました。デンマン島に来たのは丁度秋の季節でリンゴが実り、魔法にかかったような特別な魅力を感じました。それがきっかけで移り住みました」
V: デンマン島・ヘリテージ・アップルズは、具体的にどのような仕事を行っていますか?
K: 「リンゴの苗木を販売しています。食用、シードル用、料理用など、約150種類のリンゴを取り扱っています。また、カリン、プラム、洋梨など、古い品種の復活と保存に重点を置き、繁殖と栽培をしています。接木という2つの木を1つに融合させるという技術を用いて、育てたいリンゴの品種を確実に繁殖させるのです。リンゴを種から育てたら、どの品種に育つかは実は分かりません。例えば、両親から生まれた子供が、親とちょっとずつ違う特徴を持つのと同様なんです。なので特定のリンゴが好きでそれをもっと増やしたいと思ったら、接木を行いそのクローンをたくさん作らなければなりません。接木により約1年半で販売可能なリンゴの苗木に育ちます。私たちの苗木は地植えで育てます。その方が根が元気に育ち、気候が不安定な時期でもうまく育ちます。鞭と呼ばれる若木は、育ててから2年近く経った冬の休眠時期に販売します。苗木を出荷した後でも、アフターケアさせていただきます。また、果樹園の手入れ方法や設計、ジュースの搾汁などのサービスを年間を通じ提供しています」
V: 果樹の苗木を注文するのはどのような人たちですか?
K:「趣味のガーデナーの人達や、自給農業者、小規模ビジネスの庭師などが多いですね。
Covid-19の大流行により、私たちはオンライン化を余儀なくされましたが、これは私たちにとって非常に効果的でした。今ではカナダ全土の人々に販売できるようになりました」
V: 苗木はどのように出荷されるのですか?
K: 「休眠状態の苗木は丈夫です。なので注文を受けてから土から掘り出し、輸送中に乾燥しないように根球を包み、特別な長箱に入れ、カナダポストで発送しています!」
V: お気に入りのリンゴの品種はありますか?
K: 「時期 によりますね。8月なら、グラベンスタインがお気に入りです。11月は、ノーザンスパイを好みます。エグレモン・ラセットはナッツのような風味があり、チーズと一緒に食べるとおいしいですよ。また、サイダーアップルの名前は面白いネーミングが多くて、ネーミングで選ぶ事もありますね。Kingston BlackやPorter's Perfection、Westfield-Seek-No-Furtherなど、面白い品種が多くあります。 Prairie Spyは、私が今注目しているカナダの伝統的リンゴの品種のです。リンゴは世界で3,000種類以上もの品種が存在します。世界中のリンゴを選び、名付け、保存してきた人々にとって、すべて異なる目的をもっているのです」
V: デンマン島のフード・レジリエンスの現状について教えてください。
K: 「コミュニティとして、私たちは間違いなく努力しています。 私はDenman Growers and Producers Allianceという組織の役員を務めていますが、私たちの目標のひとつは、デンマン島をもっと自給自足できる島にすることです。5月から10月にかけてファーマーズ・マーケットを運営したり、ディハイドレイターやナッツクラッカーなどの機材をレンタルできるツール・シェアリング・ライブラリーを提供したりしています。
またデンマン島は野菜の栽培がとても盛んです。島のほとんどの人が、ある程度の規模で家庭菜園をやっています。乳製品と穀物は自給自足の観点で大きな課題ですが、いつかは達成できると思います。私の友人もデンマン出身ですが、島で小麦やオート麦を栽培しようとしています。別の人は米の栽培を試みています。ここで穀物を栽培できるようになれば、大きな一歩になるでしょうね」
V: デンマン島のコミュニティはどうですか?
K: 「ここのコミュニティは、私がデンマン島にいる大きな理由の一つです。みんなが本当に気を配りながら、ここをより良い場所にしようと努力しています。そんな場所に住めるのは、とても幸運なことだと思います」
V: 休日はどのように過ごしていますか?
K: 「ほとんどここの敷地内で過ごしています! あまり外出しませんし、買い物もしません。外食もあまりしませんね。パンを焼いたり、コーヒーを焙煎したり、季節のものを採ったりと、家で時間をかけていろいろ作ることが楽しい時間です。日々のシンプルな作業から充実感を得ることは素晴らしいと思います」
V: 仕事の中で一番の喜びは何ですか?
K: 「私はシーディー・サタデーが大好きで、このユニークな木々を同じように楽しみにしている人たちと分かち合うことが喜びです。このような特別な種類の木が様々な家に届き、その成長を知る事は私を幸せにしてくれます。木々が送られた先々から受け取る様々な質問に答えることにもわくわくします」
V: 庭でリンゴの木を育てる際のアドバイスをお願いします。
K: 「 一般的なアドバイスとして、最初の2~5年は、時間をかけて木の手入れをすることです。夏には水やり、春には栄養分となる肥料を与え、雑草を抑えます。そうすることで、木はスペースを埋めるようにすくすく美しく成長し、毎年実り豊かに育っていきます」